皆様、こんにちは。
ハンチングで御座います。
2013年9月。
初めて、仕事の合間を縫って1週間タイ旅へ行った時の最終日。
旅の興奮であまりよく覚えてないのだけれど、前日にどこかに激しく左ひざを打ち付けたようで、軽く腫れあがっていた。
そんな中、BTS(高架鉄道)に乗るために左足を引きずりながら、急な階段を昇ってたのだけれど、そんな僕の姿をどこからか見ていたのだろうか。
OL風のタイ人が、サッと近づいてきて心配そうな面持ちで「どうしたの?大丈夫ですか?」と声をかけてくれた。
彼女の話す、そのタイ語自体は全く分からなかったのだけど、表情とタイ語の柔らかいイントネーションから察するにこんなことを言ってくれてたのだと思う。
この予想してなかった展開に、ちょっと慌てながら「大丈夫です」なぞと、思いっきり日本語で強がって見せたりもしたものだが、初めてのタイ一人旅で怪我をして気弱になっていたところでの、彼女の笑顔になんだが救われる思いがした。
その足で、スワンナプーム空港になんとか辿り着き、出立前の時間つぶしで立ち寄ったスターバックス。
カウンターで注文の品を受け取ったはいいが、辺りを見渡せば空いてる席なぞなく、どうすることも出来ずに呆然と突っ立っていると、困ってる僕の姿に気付いた窓際に座っているマダム風のタイ人が手招きをしてくれて、2人掛けの椅子の片割れを譲ってくれた。
そこから世間話に発展すれば良かったのだが、僕の英語力がお粗末すぎて、うまく会話が出来なかったのだけど、彼女は医療関係に従事していて、今日は休暇で、シンガポールにある自分所有のマンションでバカンスをしてくると言うのは分かった。最後に、席を譲ってくれてコップンクラップと覚束ないタイ語でお礼を言って別れた。
またタイの電車内でも、あまり日本ではお目にかかれない光景も目にした。それは席を譲るタイ人の姿だ。
満員の車内、空席は無い、そこに年配の方が乗車してくる。
その姿を見るや否や「どうぞお座りください」と促す、そして譲られた方も「ありがとう」と言って座る。
譲る方も、譲られる方も、この間全く迷いがない。
流れに淀みが無く、恰も、初めから台本で決まっていたかのように。
最初のOLさん、空港のマダム、電車で席を譲るタイ人。
こんな光景、日本で最後に見たのは何時だったろうか。
困っている人がいたら助けるという精神が、ここにはまだ脈々と残っている。
タイという国の居心地の良さ、雰囲気の良さを作り出している根底には、タイ人の優しさがある。
初めてのタイ旅で心を揺さぶられた出来事の数々。
それから8年の時が過ぎ、僕はタイ移住を決断しようとしている。
会社を退職し、経済的自立は達成したのだけれど。
気持ちの部分で、タイ人のような優しさをまだ身に付けられていない気がする。
僕はうまくなれるだろうか。
タイ人のような豊かな心をもった男に。