午後2時。
定刻通り飛行機はバンコクスワンナプーム空港に到着した。
気持ちはいつものタイ旅とは違って妙な昂揚感に包まれている。
前日タイの友人にバンコクへ部屋探しへ行く旨を告げたのだがそれなら一緒に行くと言ってくれた。
聞けば職場は午後の3時40分に仕事が終わるという。
結局、友人ともう一人同じ職場の同僚、そして僕の3人で部屋へ向かうこととなった。
言葉に少なからぬ不安を感じてもいたので一寸救われる思い。
目的の場所へ向かう。
すぐさま目当ての物件に向かうとばかり思っていたのだが、てんで方向違いの方向へ友人が歩き出すので戸惑った。
しかし話を聞いてゆく内に事情が掴めた。
友人が下調べをしてくれていて目当ての物件に加えて数軒リストアップしてくれていたようなのである。
そういえば前日『目当ての物件の家賃はいくら?』と聞かれたことを思い出した。
8000バーツ。
日本円にして3万2千円である。
大阪の家賃もあるわけで2拠点生活は慎重に始めたい思いがある。
背伸びした部屋を借りてタイと大阪の往復だけで苦しい生活になることは避けたかった。
それに会社をアーリーリタイアすると決意した10年前に見栄やプライドは全部ゴミ箱に捨てた。
当時も家賃3万の豚小屋に住み、車は手放し自転車を漕いで生活していたし、1年前には家賃1万の街に住んでいた。
足るを知る。
そんな謙虚な気持ちで部屋探しをしていたつもりだったが友達からは意外な答が返ってきた。
『その家賃は高すぎる』
唖然とした。。
思い切って友達の家賃を聞けば、一人は4000バーツ、もう一人は3000バーツだという。
日本円にして1万4千円前後。。。
数分前までプライドは捨てただとか、足るを知るだとか、言っていた自分が恥ずかしくなった。
一般のタイ人から見たら8000バーツなぞという家賃は謙虚とは言えぬちょっとした贅沢な部屋なのである。
そんな僕の心境を知ってか知らずか友人達は僕を連れて小洒落た門構えの物件へ向かった。