こうやってタイでの暮らしが始まったわけだが、なにも全てが思い通りに事が運んでいたわけではない。
入居を済ませ日常用品の買い出しに小一時間ほど外出したのち自室へ戻ってきて悍ましい光景を目にすることとなる。
トイレットペーパーホルダー周辺に無数の小アリが密集して蠢いているのである。
その数推定1万匹。
これにはウッと小さな驚嘆をあげ、しばし棒立ちの体で動けなくなってしまう。
『私が掃除するので1時間待って下さい』とスタッフに言われ親切心から来る行動かと思ったのだが、この状況を僕よりもいち早く見つけた末の行動だったのでは、、と勘繰ってしまう。
部屋を案内してくれたスタッフも帰路に着いたのか姿が見当たらないのでこれは自力でなんとかせねばならぬ展開である。
コンビニに走りジェット噴射式の殺虫剤を購める。
トイレットペーパーホルダー周辺のみならず壁や床全体的に噴射する。
すごい刺激臭で咽せ返ったがさすがタイの殺虫剤は効き目が強いのか小アリはあっという間に駆逐される。
次に侵入経路を探る。
まず目についたのがトイレ上部に備え付けられている小窓である。
バルコニーに出てその小窓と念には念をいれバルコニー全体にも噴射。
買ってきた殺虫剤は瞬く間に空になった。
よしこれで大丈夫だろう。
ホッと一息ついたのち遅めの夕飯をとりに外出し自室へ戻る。
トイレのノブを回すとそこには新たに侵入に成功した小アリが群がっていた。
完敗。
こうやってタイ移住初夜は感動的でもロマンティックでもなく小アリ襲撃との戦いに明け暮れるのだった。