皆様、こんにちは。
ハンチングで御座います。
家賃1万円の街。大分県杵築市へ引っ越してきて早1ヶ月になる。
東北で生まれ育ち、東海地方で働いていた僕にとって九州とは未知の土地でもある。
地元の方にすれば日常の風景も僕にとっては新鮮に映るものだ。
特に杵築のスーパーへ行きそこに陳列されている商品を見て驚くことが多い。
スーパーの鮮魚エリアを歩いていると見慣れぬ商品が並んでいる。
「りゅうきゅう」
中でも異彩を放つのが、りゅうきゅうと言う商品である。
杵築へ越して来た当初は気にも留めていなかったのだけど、サンリブ、ダイレックス、Aコープ、どこのスーパーへ行ってもその名の商品が当たり前のように陳列されているのだからどうしたって気になっても来る。
最初は九州地方で水揚げされる地元でのみ流通している魚の一種かと思っていたのだけど、その商品の中身を覗くと、どうも1種類の魚で作られた刺身というわけでもなさそうだと言うのは魚に詳しくない僕でも一目で分かった。
そうか。分かったぞ。
色とりどりの魚の切り身が、如何にも琉球王国のような、見た目も鮮やかな華やかさを演出している。
だから、りゅうきゅうと言うのだ。
きっとそうだ。
その事実を確かめる為にも、ここはひとつ商品を購めてみようと思い、立ち寄ったダイレックスで「お魚いっぱいりゅうきゅう丼」なる丼を購めた。
そこには、ぶり、アジ、サーモンの切り身が乗ってあり、中々食べ応えのある丼だったわけだけど、丼に3種類もの魚の切り身が乗っていることで「やはり色とりどりの魚の切り身をりゅうきゅうと言うのだな」と自身の想像が確信に転じもした。
杵築市で出会った、りゅうきゅうという謎の商品の正体を発見しスッキリした気持ちで過ごす事1週間。
何気なく訪れたダイレックスにて僕のスッキリした気持ちを一撃で砕く商品に出会ってしまった。
「ぶり」だけなのに、りゅうきゅう.....
ちょっと待ってくれ。
色とりどりの魚を切り身が、如何にも琉球王国のような、見た目も鮮やかな華やかさを演出しているだから、だからこそりゅうきゅうじゃなかったのか。。。
それとも大分では、ぶりのことをりゅうきゅうと言うのだろうか。
いや、そうなると、色んな魚の切り身が入った商品がりゅうきゅうと名乗っていることに矛盾が生じる。
ダメだ、頭が混乱してきた。
もうこうなったら地元の方に聞くしかないだろう。
僕は思い切って、近くで買い物していたおばさんに声をかけた。
「あの、すみません、りゅうきゅうって何ですか?」
おばさんは鳩がマメ鉄砲をくらったような表情で答える。
「りゅうきゅうは.....りゅうきゅうです」
僕の質問がまずかったのだろうか。
例えるならサーモンの刺身を指さして「あの、サーモンって何ですか?」
「サーモンは、サーモンです」のような答えようがない当たり前の質問をしてしまったのだろうか。
きっと間違っているのは僕だ。
おばさんに胸を張って「りゅうきゅうです」と言われてしまい動揺を禁じ得ない。
僕はどうやら出口のない迷宮に舞い込んでしまったのだろうか。
りゅうきゅうって一体なんなんだ。。。
そんなことをTwitterで発したら、大分県に詳しい方が助け舟を出してくれた。
りゅうきゅうとは、地元で採れた新鮮な魚を、醤油、酒、みりん、ごま、しょうがで作るタレと和えて頂く大分の代表的な郷土料理。
「りゅうきゅう」という名については諸説あるが、大分の漁師が琉球(沖縄)の漁師に作り方を教わり、地元へ持ち帰ったことから「りゅうきゅう」と呼ばれるようになったらしい。
面白いなと思った。
こんな感じで地元の人にとってはごく当たり前の商品が、僕の目には新鮮に映る。
移住とは、スーパーで買い物するという何気ない日常でさえ新鮮に感じたり、ずっと同じ土地で住み続けることで生じる重苦しい停滞感を一気に吹き飛ばしてくれる、そんな面白さがある。
移住して1ヶ月。
まだ知らない杵築市がきっとどこかある。
そんな驚きに出会う為、僕は今日も自転車に跨り田舎町を闊歩するだろう。