皆様、こんにちは。
ハンチングで御座います。
無職は部屋を借りれるのか?FIRE大分県杵築移住を目指す旅路その1~タイと日本のデュアルライフ~ - FIREでタイ移住
無職は部屋を借りれるのか?FIRE大分県杵築移住を目指す旅路その2~タイと日本のデュアルライフ~ - FIREでタイ移住
不動産屋で3件の物件をリストアップ。
どれも賃料1万円程度の物件である。
ネット上で、何度も、何度も、見て来た物件にこれから向かうと思うと少しだけ胸が高鳴る。
今日、一体どんな物件に出会う事になろのだろうか。
期待を胸に抱いた僕を乗せた車が、ゆっくり走り出した。
車内。
「投資家さんということは、不動産か何かですか?」
投資家という聞きなれぬ、職業を告げたからだろうか。
踏み込んだ質問が飛んでくる。
この問いかけの裏には「不動産ならば定期収入もあるであろう」という含みも感じなくもない。
「いや、不動産ではなくて、株式を運用してます」
と正直に告げる。
「あの...僕、審査通らないでしょうか?」
聞いてしまった。
思わず不安が、喉元から溢れ出てしまう。
その問いに。
「無職で杵築に来られる方もいらっしゃるので、まあ、それを考えると大丈夫だとは思いますけど...こればっかりは審査会社側の判断になるので...」
と期待とも不安ともつかぬ、掴みどころのない、ふんわりとした答を返してくる。
物件D到着。
駐車場に車を停め、その建物の全容を眺める。
外観、日当たり、問題なし。
問題ないどころか、さすが田舎だけあってベランダの目の前に隣の建物が建っていて視界を遮っているような物件は皆無で、ここに来るまでの道中、どのアパートを眺めても皆一様に見晴らしや日当たりは良い物件ばかりだ。
ただそうは言っても先進国日本において賃料1万円という今時、東南アジアでも中々お目にかかれぬ値付けがされた物件でもある。
ネットで見た印象と、実物は違うというのは大いに有り得るのだ。
問題は室内である。
やっぱりぼろいのだろうか。。
期待半分、不安半分といった感じで玄関のドアを開けた。
「めちゃくちゃ綺麗じゃないか...」
清潔感がある。
第一印象で出て来た言葉がそれだった。
床のフローリングも、真っ白な壁紙も、部屋に籠る嫌な臭いも無い。
部屋は7~8畳位の広さがあり、大き目のクローゼットも備え付けられてある。
キッチンには2口コンロが置けるスペースがあり、その横にはまな板も置けるゆとりがある広さ。
バス、トイレは独立していて、独立洗面台とトイレにはウォッシュレットまで装備されている。
室内洗濯機置き場もあり、ドラム型洗濯機を置くことも可能である。
僕が今住んでいる賃料3万の豚小屋とは比べ物にならぬ程、質感に差がある。
にも関わらず賃料が1/3だと言うのだ。
そういえばエアコンはどんなものが付いてるのだろうか。
今、僕は賃料3万の豚小屋に備え付けられ常時異音を発っし続けるエアコンに悩まされている。
なにしろ令和3年のこの時代に「ナショナル製」という昭和57年製造の化石じみたエアコンを設置しておきながら「故障時は借主負担で修理」なぞと太々しく言い放つ大家に苦しめられてる身としては是非とも確認しておかねばならぬ項目でもある。
そこには真新しいエアコンが設置されていた。
動作確認をするも変な異音もせず涼やかな風が頬をなでる。
「このエアコンはオーナーさんが一度、買い替えてますね」
築10数年しか経っていない、賃料、僅か1万の物件に備え付けられているエアコンを、オーナーが新しいものに買い替えていると言う。
「あの、もしこのエアコン故障したら僕が修理費負担することになるのでしょうか?」
その問いに。
「いや、オーナーさん負担なので心配しなくて良いですよ」
と、そんなの当たり前じゃないですか、みたいな雰囲気で笑顔交じりに答えてもくれる。
「オーナーと借主の間に我々、管理会社が入ってますので、そういう心配はいりませんよ」
とも言う。
続いて、物件A,物件Bと立て続けに内覧。
3件みるも、その全て共通して部屋からは清潔感が感じられ、僕が危惧していた「賃料安いけどちょっと部屋が劣化している」ようなことはなかった。
全く抵抗なく住めるレベルの部屋ばかりで、どれも甲乙つけがたく、今すぐここに引っ越して来たいと思わせるものばかりだった。
「良かったら、車で杵築の中心地を巡って帰りましょうか」
初めて杵築を訪れた僕の為にわざわざ車を走らせてもらうことになった。
スーパー、ホームセンター、役場、図書館。
もし住み始めたら、通う事になるであろう施設を一通り巡って案内してもらう。
「九州の人は親切だなあ」
当日に問い合わせそのままやってきた飛び込みの来客者への暖かい対応になんだか救われる思いがした。
不動産屋へ戻る。
僕は、悩んだ結果、物件Dに決めた。
「あの、最初に見た、物件Dでお願い出来ますか?」
すると。
「分かりました。ちょっと確認します」
そう言い残し奥に行き、上司への最終確認なのか、審査会社への問い合わせなのか定かではないが、なにやら誰かに電話をしている風である。
その妙に長いやりとりに不安を感じながら注視していたのだが、そのスタッフの話し声が電話越しに徐々に暗くなってゆくのである。
「またか.....」
大阪で審査にさえ進めず、管理会社に門前払いを食らった、あの苦い記憶。
あの時と全く同じ展開じゃないか。。。
ようやく長い電話を終え、うつむき加減でスタッフが返って来るのが見えた。
「すみません、実はハンチングさんが希望したお部屋なのですが、先程、他の方に決まったようでして。。」
「えっ......」
想定外の答えだった。
聞くところによると、今日の午前中に、他の方がこの部屋を押さえたと言うのだ。
僕が内覧へ向かったのが午後1時過ぎだったので、タッチの差、時間にすると僅か「2時間差」で希望の物件を奪われたことになる。
東京、大阪の大都会なら分からぬでもない。
そんなこともあるだろう。
ただ、ここは大分県杵築市。田園風景が広がる田舎である。その長閑な田舎でこんな際どい時間差で取られることになるとは思ってもみなかった。
もしかして今、杵築市人気が沸騰してるのだろうか。
そうも思ったが、すぐにそんな馬鹿なこと...あるわけないよな。と自分に言い聞かせるように呟いた。
落ち込む僕にスタッフから救いの声がかかる。
「実はハンチングさんの希望した物件、2部屋の空き部屋がありまして、最後の1部屋まだあります」
間取りも全く同じと言う。
「そこ、そこでお願いします」
と飛びつくように願い出るのだった。