インデックス投資でアーリーリタイア

2021年長年勤めた会社を40代でアーリーリタイア。大阪を拠点によしもとお笑いライブ観覧と阪神タイガース応援と旅中心ライフ。インデックス投資歴18年目。

日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」

面白くて一気読みしました。

本書は、海外の困窮日本人を現地で取材している記者でマニラ在住の水谷竹秀氏が、「困窮邦人」と呼ばれる、日本を捨て海外へ飛び出し、その日暮しを続けている日本人を追ったノンフィクション・ルポルタージュです。

フィリピンに渡って無計画に全財産を使い果たしてしまい困窮生活をしている中年日本人男性5人が登場します。

吉田正孝、浜崎貞雄、須藤亮介、榎本庄太郎、星野政志(すべて仮名)。いずれも日本を捨てて海外で困窮生活を営む道を選んだ男たち。著者は、この5人の困窮生活者の生活ぶりを地道に追い続け、時には、日本にいる家族や以前勤めていた会社へ赴き取材を直々にお願いし、困窮邦人達がフィリピンにたどり着くまでどのような人生を歩んで来たのか?と言う過去、そしてフィリピンに渡ったのちどういう経緯で貧困日本人に落ちていったかという現在を見事な描写で読者に伝えている。

【開高健ノンフィクション賞受賞作】常夏の国フィリピンで、困窮生活を送る何百人もの日本人男性がいる。フィリピンクラブで知り合った女性を追いかけてきた男、偽装結婚のカモにされた男……所持金ゼロ、住む家もない彼ら「困窮邦人」に手を差し伸べるのは、フィリピンの貧しい人々だった。男たちのすさまじい生き様を通して現代日本の問題点をあぶり出す、渾身のルポルタージュ。第9回開高健ノンフィクション賞受賞作。

 その中の1人を簡単に紹介。

星野政志は51歳まで33年間会社一筋。

会社で出会った女性と社内結婚し年齢とともに昇給は年収1000万円を超え、子供二人を育て、女遊びはしない。酒もほとんど飲まない。絵にかいたような堅実に真面目な人生を歩んでいた。

だが、単身赴任先の福島県ですべてが壊れ始める。

同僚と訪れたフィリピンクラブ。

この店で星野は女の子に口移しでキャンディをもらう。日本のクラブではありえない体験が星野の人生を狂わせる。

次第にひとりで行くようになり、1日で多い時は4万〜5万円が財布からなくなり、週5回ペースで通い続ける。2年間で1000万円以上つぎ込み、星野は離婚を決意し、25歳ほど歳下のフィリピン人と再婚することに決める。

またこの時期に皮肉なことだが職場から退職金を1・5倍にするという希望退職の話が舞い込み、総額約4900万円の退職金を手にし、長年連れ添った妻と子供を捨て、日本も捨てる。

全財産である現金4900万円をそのまま手荷物で飛行機に乗せ新妻と共にフィリピンへ飛び立つ。

フィリピンで銀行口座を開設しようとするも、星野名義で口座開設することは出来なかった。

その為、4900万円全額を新妻名義の口座に入金。

退職金から1000万円を使い、彼女の実家の近くに土地を購入して自宅を建てる。

妻の兄弟にジープを3台買って300万円を使う。

妻の勧めで養鶏場のビジネスに約1000万円を投資したが養鶏場は思うように儲からず投資した1000万円を回収するにはほど遠く、ビジネスから手を引く。

やがて揉め事が多くなり、7年後には妻を自宅から追い出し1人で住むようになったが、フィリピンでは外国人名義での宅地購入ができないことから、家の名義人は妻になっており、その妻から結局、「自宅を売る」と言われた星野は、追い出された。

著者が出会った頃には星野の貯金残高は6万円にまで減っており、星野は毎月5000ペソ(約1万円)以内に切り詰めて生活を続けていたという。
星野が記した家計簿ノートがその生活を如実に表していた。

「パン18(約36円)、米198(約396円)、タバコ130(約260円)、サカナ90(約180円)・・・」。

 

他には日本でヤクザから多額の借金を作り、夜逃げ同然でフィリピンに逃げて来た男。

 

知人に紹介されたフィリピン人女性との婚約が偽装結婚だった58歳。

 

クラブで出会ったフィリピーナに熱をあげ、全財産(20万円)を握りしめフィリピンに里帰りした彼女を後先考えずに追いかけて来たが、彼女から袖にされ、早々に資金が底を尽き、帰りの航空券も買えなくなり、ホームレスに落ちた中年日本人。

 

そしてそのホームレス日本人に救いの手を差し伸べるのは、日本人でも大使館でもなく貧困層のフィリピン人だった。。

 

「私たちのような貧しい人は、自分たちがつらい経験をしたら、同じ経験をさせたくないと思います。金持ちには、貧しい人の状況を理解することはできない。(中略)だから、彼にはテーブルにある物は食べてもらっていいし、石けんやシャンプー、たばこぐらいはあげてもいい」

 

本書には「感動ストーリー」は存在しない。

あるのは圧倒的なリアリティーだった。

↓水谷竹秀氏の新書。バンコクのコールセンターで低賃金で働く日本人のノンフィクション・ルポルタージュこちらはこれから読みますが楽しみです。