遂に契約当日の朝を迎えた。
本当に2300万円で買ってくれるのだろうか?
当日ギリギリになって「やっぱり辞めておきます」と言われるのではないか。
考えれば考えるほど不安になり昨夜はあまり寝付けなかった。
「相手の気が変わらない内に早く、早く契約を終わらせたい」
私は、はやる気持ちを抑えつつ手に汗をびっしょりかきながら車のハンドルを握っていた。
不動産会社の店舗へ到着。
店内へ入ると今回物件を購入して頂けるご夫婦も来ていた。
初めての対面。
旦那さん 初めまして、仕事が忙しくてすみません。
旦那さんは物件の内覧とこの日の最終契約。
つまりたった2日しか時間が取れなかったらしい。
初対面だがその表情には日々の仕事の忙しさが表れていた。
毎日長時間仕事に追われ、その結果、物件交渉を奥さん一人でされた事がはっきりと感じられた。
席には社長と私が横に並び、ご夫婦と対面する形で座った。
机の上には様々な書類が準備されていた。
その書類に次々と範を押してゆく。
そこにはまぎれもなく2300万円と言う数字が刻まれていた。
社長 中古売買の決まりとして仲介手数料として売却価格の「3%+6万円」を仲介した私にお支払してもらいます。今回は2300万円ですので「69万円+6万円=75万円」ですがこれは双方折半と言う事で37万5千円づつ負担して、、
たくま いえ、私の方で38万円払います。ですので37万円だけ負担お願いします。
口が裂けても言えないが新築と全く同じ価格で買ってくれた事に対するせめてもの罪滅ぼしだった。
最後に鍵を手渡して全ての手続きが完了した。
店舗を出て車に乗り込んだ。
その瞬間、私の心の上にずっと乗っかっていた大きな重りが無くなり、心の底から安堵感に包まれた。
●資産と借金、2006年34歳
貯金 700万
借金 0円